低心拍出症候群(low cardiac output syndrome:LOS)

1ヶ月程前に心臓血管外科を回ったんだけど、やはり内科と外科ではおおいに違い、わからないことが多かった…。

そんな中でも患者さんを失うことになった原因(の1つ)である低心拍出症候群について少し調べてみた。

 

低心拍出症候群は、心臓手術後、収縮期血圧90mmHgかつ心係数(cardiac index:CI)が2.2L/min/㎡以上を維持するために術後IABPが必要となった、またはICUにおいて筋収縮支援が30分以上必要となったもの。

4558例のCABG症例について検討されたものでは、LOSは9.1%に出現。
死亡率はLOS症例の方がそうでないものよりも高率であった(16.9% vs 0.9%)

risk factorは、
1.EF(Ejection fraction)<20%
2.repeat operation
3.emergency operation
4.女性
5.糖尿病
6.70歳以上
7.LADの狭窄
8.亜急性心筋梗塞(recent MI)
9.3枝病変

など。他の文献では開心術後早期に左心機能良好であるにも関わらず原因不明の低心拍出量状態を呈した場合にはコアグラタンポナーデの可能性を考えるというような記述もあった。

 

あまり時間が取れなくてちょっとしか調べられなかったのでまた時間があるときに調べる予定(といいつつどんどんやることが溜まっていく…)。

  

(参考文献)

Predictors of low cardiac output syndrome after coronary artery bypass.
Rao V et al. J Thorac Cardiovasc Surg. 1996 Jul;112(1):38-51.

| | コメント (0) | トラックバック (0)

脳梗塞・心筋梗塞の再発を予防したい!!

今回の目的は、やはり実習で受け持った患者さん関連。

AMI(LMT + three vessel disease)→CABG後でアスピリンとワーファリンが投与されていたが、脳梗塞で入院。危険因子も多く薬も色々出されてるけど、poor complianceで…。

というケースでアスピリンとワーファリンをそのままいくかどうか。

まぁ、何となくいけそうな感じなんだけど、せっかくなんで勉強してみた。

 

ハリソン内科学を読むと、とりあえずアスピリン単独よりアスピリン+ジピリダモールの方が効果があるらしい。でもpoor complianceなんで薬は増やしたくないしと思って適当に調べてみると、今年8月のLancetに、

「アスピリン+ジピリダモールの併用はクロピドグレル単剤と効果は変わらない」

というtrialの結果がでた。

ついでに調べていると、

「アスピリン+クロピドグレルの併用はクロピドグレル単独と効果は変わらないばかりか出血リスクの増大をきたす」

というような報告も発見。やりすぎはよくないらしい。

ということはアスピリン→クロピドグレルにしたらいいんじゃね?

とか単純に思うわけだけれど、心臓の方の二次予防とか考えるとアスピリンって外しにくいイメージだな…。

クロピドグレルがアスピリンと同様以上の働きをしてくれれば問題ないわけだが。理論的にはクロピドグレルの方が効果が強いような感じなんだけど…。 

まぁ、欧米と日本とでは使い勝手が違う可能性も十分あるわけだけど、何かと最近話題(自分の中で)のクロピドグレル。選択枝の1つとしてはありだと思うんだけどな…。

 

※脳梗塞のガイドラインではアスピリン+ジピリダモールはそんなに効果がないというtrialが載ってたし、クロピドグレルについてもそこまで前向きには使わない感じだった。

 

(参考文献)

 Aspirin and clopidogrel compared with clopidogrel alone after recent ischaemic stroke or transient ischaemic attack in high-risk patients (MATCH): randomised, double-blind, placebo-controlled trial.

   Diener HC et.al: Lancet. 2004 Jul 24-30;364(9431):331-7

    Effects of aspirin plus extended-release dipyridamole versus clopidogrel and telmisartan on disability and cognitive function after recurrent stroke in patients with ischaemic stroke in the Prevention Regimen for Effectively Avoiding Second Strokes (PRoFESS) trial: a double-blind, active and placebo-controlled study.

      Diener HC et.al: Lancet Neurol. 2008 Aug 29. [Epub ahead of print]

| | コメント (0) | トラックバック (0)

constrictive pericarditisの予後

     予後を規定する独立した因子は縦隔の放射線治療、年齢、血漿中のNa濃度。Ⅰ度房室ブロックの存在は心臓血管死亡率の独立した因子。

     心膜剥離術により明らかな機能的改善がみられるが、心膜剥離術を施行された患者の60%以上は診断されてから10年以内に死亡している。

     moderate/severe TRは独立した予後規定因子。

     5年生存率はmoderate/severe TRがあると47%、ないものは87%

 

 

(参考文献)

・Long term evolution of chronic constrictive pericarditis. A study of 56 patients

 Arch Mal Coeur Vaiss. 2006 Sep;99(9):775-80. French.

・Tricuspid regurgitation in patients undergoing pericardiectomy for constrictive pericarditis.

 Ann Thorac Surg. 2008 Jan;85(1):163-70; discussion 170-1.

| | コメント (0) | トラックバック (0)

心破裂

AMIacute myocardial infarction:心筋梗塞)→ FWRfree wall rupture:自由壁破裂)の症例を経験したので、FWRについて勉強してみた。

まぁ、相変わらず適当な箇条書きだけど自分の勉強用なので…。

とりあえず今回はメディカルオンラインが使えないため(諸事情によりしばらく大学にいない)、Pubmedから適当に論文を引っ張ってきた。…ってこっちの方が情報量が多いな。めんどいけど…。で、適当に持ってる本などで補充。

  • 日本(A)と外国(B)で発表されてる論文で症例数が多いものを選んでみたところ、AMIFWRを合併した症例数は773,2842.3%)(A)、401,7372.3%)(B)と一致したので、大体こんなもんなんだろう。別の論文(AMI 4200症例、C)では死亡例の18.1%がFWRによるものだと報告されている。厚労省の研究班報告による虚血性心疾患の一次予防ガイドライン(2006年改訂版)では(以下厚労省ガイドライン)、心破裂の合併は45%と報告されている。
  • FWRは急性と亜急性に分けられる。急性では急激にショック・electro-mechanical dissociationに陥るため、救命は極めて困難。亜急性だとショック・心タンポが比較的ゆっくりなので診断・治療までに時間的猶予があり、救命が可能な確率が上がる。報告Aでは急性が66.2%(発症後24時間での破裂が59.7%)、亜急性が33.8%。このうちオペに持ち込んで救命できたのは10.4%(急性+亜急性)。データからさらに計算すると急性型で救命できたのは3.9%、亜急性型で救命できたのは23.1%。報告Bの方は詳細には書いてなかったけど、2つの報告をまとめると、急性の方が多くてそのうち半分くらいは24時間以内に破裂しているらしい。
  • 現在報告されているハイリスク因子は、論文Cによれば年齢(70.3±3.2)、女性、心事故の経験があるが心筋梗塞既往歴はない、初回ECGQSが存在、複数の冠状動脈性心臓病、症状の出現から治療までの時間が長いなどが報告されている。論文Bでは女性、60歳代であることがリスク因子に、他に女子医大からの報告(AMI 2,671症例)でも高齢(>70)や初回梗塞は独立したリスク因子だと報告されている。持ってる本によればPCI症例より血栓溶解療法症例に多く、LADの末梢領域の前壁・側壁に多いらしい。
  • ハイリスク患者に対する予防として降圧療法が言われているが、厚労省ガイドラインによれば降圧による心破裂予防の施行および緊急手術による救命例の増加によっても,死亡原因に占める割合は変化していないのが現状。AMIの経験豊富な人に聞いた話では、とりあえずBP120でも高いくらいで110以下にはしておかないといけないとか。また心室瘤があるときには6日以降でも急性型の破裂をすることがあるらしい。
  • これまた聞いた話で、前壁梗塞では心膜炎の合併が多く、心膜炎も心破裂に影響しているとか…。

なんか最後の方は聞いた話ばっかりだなー…。まぁ、そのうちきちんとデータを見つけられれば補完しよう…。

 

 

(参考文献)

  • Clinical course, timing of rupture and relationship with coronary recanalization therapy in 77 patients with ventricular free wall rupture following acute myocardial infarction.Tanaka K ,et alJ Nippon Med Sch. Oct;69(5):481-82002
  • Cardiac rupture in patients with acute myocardial infarction.Shapira I, et al, Chest. Aug;92(2):219-23.1987
  • Cardiac rupture risk estimation in patients with acute myocardial infarction treated with percutaneous coronary intervention.Markowicz-Pawlus Eet alCardiol J.;14(6):538-43.2007
  • Risk factors and effect of reperfusion therapy on left ventricular free wall rupture following acute myocardial infarctionYamaguchi Jet al, J Cardiol. Apr;35(4):257-65. 2000

| | コメント (0) | トラックバック (0)

BNP

前に受け持ちだった患者さんのところに顔を出したら、

もうすぐ退院になりそうだということで喜んでたんだけど、

ちょっと検査値で気になる値が。

というわけでその検査値について調べなおしてみることに。

 

BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド:brain natriuretic peptide)

  • 心室の負荷により分泌が亢進。BNPの遺伝子発現は心室へのあらゆる負荷で増加する。つまり左室負荷、右室負荷、前負荷、後負荷、収縮障害、拡張障害に関わらず、心室に負荷がかかれば亢進する。
  • BNPは左室拡張末期圧をよく反映し、心不全の補助診断としてANPに比べて感受性、特異性ともに有意であるという報告が多い。
  • BNP濃度と生命予後の関係については重症心不全患者を対象とした研究で報告され、海外の大規模臨床試験のサブ解析においても確認されている。
  • BNPの濃度が高いほど心事故の発生率が高い。Val-HEFT研究の中央値は97pg/mlであり,BNP値が10pg/ml上昇するごとに死亡率が1.2%上昇することが報告されている。
  • 慢性心不全で入院した症例を対象に,退院時のBNP値で退院後の心事故(死亡,心不全の悪化による再入院)の発生率を前向きに比較検討すると,BNP値が低いほど有意に低率であり,およそ200~250pg/mlが退院時のメルクマールになると報告されている。
  • 一般集団を対象にした健診におけるBNPの有用性に関しては未だ結論が出ていないが、Framingham Studyでは集団の80パーセンタイル値(約20pg/ml:シオノリアBNPで測定)以上の群では以下の群より有意に心事故の発生率が高いことが示されている。

以上、慢性心不全治療ガイドライン(2005年改訂版)より。

自治医科大の研究では症例数は少ないものの、血清BNP値と重症度が比例して上昇することが示唆されている(平成18年度自治医科大学医学部研究奨励金研究成果報告)。

 

ちょっと右心系とBNPの関係について知りたいことを色々調べられず。

また時間があるときに調べよう…。

 

| | コメント (3) | トラックバック (0)

控訴断念(福島大野病院事件)

とりあえず検察側は控訴を断念したということで、

無罪確定…だよね。

 

日本産婦人科学会の声明。

福島県立大野病院事件についての福島地方裁判所無罪判決に対する 検察当局の控訴断念について

| | コメント (0) | トラックバック (0)

アナフィラキシー

実習で僻地に行ったときにも数回話題に上り、先日車の点検に行った時にもディーラーさんと話題になりと、最近よくアナフィラキシーの話が出る。

そして今日国試の問題を解いているときにいくつか疑問が生じたので勉強してみることに。まぁ、適当な話をするわけにもいかないし(今更)。

情報源はとりあえず信頼できるものがいいので適当に探してみて以下を参照。

 

AHA心肺蘇生法ガイドライン2005ーアナフィラキシー

 

まぁ、アナフィラキシーの基本的なところは省略するとして…。

いくつか自分の気になるところを。

 

<原因(致死性の高いもの)>

薬剤:抗生剤(特に非経口的ペニシリン系と他のβラクタム系)、アスピリン、NSAID(非ステロイド性抗炎症薬)、静脈内造影剤

虫刺症:アリ、ミツバチ、スズメバチ、アシナガバチおよびスズメバチ。致死的な反応は10~15分で起こる。国試的に最も毒性が強いのはスズメバチ。

食物:ピーナッツ、木の実、海産物、小麦

 

<徴候と症状>

  • 重症の上気道、下気道の浮腫。もしくは両方。stridor や wheezing が生じる。stridorは吸気時のみに、しかもかなり離れていても聞こえる大きな音。これがあると上気道に70%以上の狭窄があるといわれる。wheezingは下気道の狭窄・痙攣時に聞かれる。
  • 血管拡張による相対的な循環血液量減少。患者は興奮・不安を呈したり、皮膚紅潮や蒼白となることがある。
  • 消化管系の徴候・症状として腹痛、嘔吐、下痢。

 

<鑑別診断>

アナフィラキシーと似た徴候や症状を示すものがあるが、とりあえずアナフィラキシーを除外した後に他の原因を検索(アナフィラキシーが特に致死的なため優先)。

  • サバ中毒:マグロ、サバ、マヒマヒ(シイラの仲間)などが腐ったものを食べて30分以内に起こる。蕁麻疹、嘔気、嘔吐、下痢、頭痛などを呈する。抗ヒスタミン剤で治療。
  • 血管浮腫:遺伝性血管浮腫。アナフィラキシー早期血管浮腫や薬剤関連性血管浮腫と区別できないが蕁麻疹は遺伝性血管浮腫では生じない。C1エステラーゼ阻害置換濃縮物で治療。もしくは新鮮凍結血漿が使用される。
  • ACE阻害薬:主に上気道の反応性血管浮腫と関連。ACE阻害薬治療開始後、数日~数年で発症。最適な治療法は明らかでないが、早期からの積極的気導管理が重要。
  • 他に重症気管支喘息、パニック障害、血管性迷走神経反射など。

 

<心停止予防のための処置>

酸素:高流量で用いる。

アドレナリン:(国試的に最優先)

ショックでは皮下投与後の吸収や最高血漿濃度への到達が遅いので筋注の方が望ましい

全身性反応の徴候、特に低血圧、気道の腫脹、明らかな呼吸困難が見られる全ての患者に対し早期にアドレナリン筋注投与。投与量は1000倍溶液を0.3~0.5mg、改善なければ15~20分毎に投与。

重篤なケースでは1万倍溶液0.1mgを5分間以上かけてゆっくり静注。致死的な過剰投与の報告があり、モニタリングを慎重に。

βブロッカー使用中の患者ではアナフィラキシー頻度と重症度が増加しアドレナリンに対して矛盾した反応を呈することあり。イプラトロピウムだけでなくグルカゴン(短時間作用性。5分毎に1~2mg筋注or静注。副作用に嘔気、嘔吐、高血糖)も考慮。

心停止しているケースでは高容量を急速静注。1~3 mg(3分)、3~5 mg(3分)、続いて 4~10 μg/minの持続注入。

輸液:低血圧ありアドレナリンにすぐ反応しなければ、等張晶質液(生食など)を投与。初期には1~2ℓまたは4ℓ必要なことも。

心停止時には、少なくとも2本の太い静脈路を圧迫バッグとともに使用、4~8ℓを急速投与する。

抗ヒスタミン薬:ゆっくり静注or筋注(ジフェンヒドラミン25~50mgなど)

H2ブロッカー:シメチジン300g経口、筋注 or 静注 など

β作動薬吸入:気管支痙縮がメインであればアルブテロール。βブロッカー使用中の患者であればイプラトロピウム吸入が有効。重症喘息患者でアナフィラキシーを呈しているケースでは、アドレナリンでなく常用量の気管支拡張薬が繰り返し投与されていることがあるので注意。

ステロイド:治療初期に高容量を静注。効果がでるまで4~6時間以上

毒腺除去:スズメバチを除くと蜂に刺された場合、針などが残っていることがあるので初期のいずれかの時点で刺された部位を観察し、残っていれば除去する。遺残組織を圧迫したりしないこと。

 

<観察>

観察期間についてはエビデンスなし。一部患者(多くて20%)は無症状期をはさんで1~8時間以内に症状が再発。最大36時間後に発生することがある。

治療後4時間無症状であれば退院してもOKか?反応が重篤であったり問題点あれば長期間の経過観察必要。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

癒着胎盤→子宮全摘

福島大野病院事件の裁判の記録をちらほらと見ていると、

検察側は「癒着胎盤を確診した時点で子宮全摘をしていれば救命できた可能性がある」と主張していたらしい。

一方現場では、癒着胎盤と診断されたケースにおいて胎盤を剥離し終えた時点で子宮全摘の要否を判断することが多いらしい。これはやはり患者さんにさらなる挙児希望があったり、子宮全摘という手技のリスクを考えた上での選択なのかなと思う。

 

さらに色々調べてみると、「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」というHPに行き着いた。この事業は診療行為に関連した死亡について、死因究明及び再発防止を目的として中立的な立場で解剖、分析、検証するものらしい。

その報告の中で、癒着胎盤と診断されていた患者さんが帝王切開に引き続き胎盤を剥離することなく直ちに子宮全摘術を行われたが、残念ながら亡くなられたという事例が報告されていた。

状況を引用すると、

20歳代女性。既往歴に2回帝王切開手術を受けた主婦。今回妊娠早期より前置胎盤と前の帝王切開創への癒着胎盤と診断され、自己血の貯血と輸血を準備し帝王切開を予定していた。予定した帝王切開まで子宮収縮抑制薬を点滴投与していたにも拘わらず妊娠33週に性器出血が増量し、さらに破水し、陣痛が発来したため緊急帝王切開をした。手術は帝王切開に引き続き胎盤を剥離することなく直ちに子宮全摘術を行ったが、摘出直後に予期せぬ心拍停止が発生し、急激な予測不能な大量出血により母体死亡を来たした。最終出血量は9053mlに及んだ。 

というものである。詳しい記録は以下のPDFへ。

http://www.med-model.jp/kekka/jirei38.pdf

残念ながら患者さんは亡くなられたが、「胎盤を剥離することなく直ちに子宮全摘術」というのは裁判の影響を受けているのだろうか。逆に言えば、この症例で子宮全摘にいかず胎盤剥離を行っていれば助かった可能性もあるのだろう。

 

報告の最後には、

「患者を救命することを使命とする医療従事者は、処置し難い症例が現実には存在し、不幸な転帰を辿る症例もあり対処出来るように努めなければいけない。」

との提言と同時に、

「このような症例が現実にあることを医療界だけでなく、一般の方々にも開示し理解して頂くことを希望する。」

とまとめてある。

 

このように十分な準備を行ったうえで設備の整った医療機関において手術を行っても、残念ながら力の及ばない事がある。特に医療行為に関しては個々の症例で状況が変わり「このケースではこうすべきだった」というものは存在しないのではないだろうか(医療の不確実性?)。

だからこそ今回の事件でも「刑事裁判にそぐわない」という意見が各所から出ているのだろうし、現状を何とかしなければという動きが各所(一部?)で見られてるのだと思う。

 

とりあえず適当に私見を書いてみたんだけど、現状を打開するのはやはり難しいんだろうなぁ…。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

福島大野病院事件

今月20日にとある裁判の判決が出た。

対象となったのは4年前に福島県立大野病院で前置胎盤のため帝王切開を受けた女性が、癒着胎盤を生じていたためにその合併症で亡くなられたというもの。

亡くなられた患者さんのご遺族の方には今回の件は非常に残念であり、お悔やみ申し上げます。

 

判決についてニュースは以下の通り。

「帝王切開死」医師に無罪(読売新聞) -2008/08/20

もう内容については各所で取り上げられているのでパスするとして…。

 

この事件に関しては自分も非常に注目していたけど、

結果としては判決(無罪)を支持しています。

まず今回の事件は今までの事件と大きく異なる点がある。これまでのケースでは医師が行った行為自体にミスがあったために問題が起こっているのに対し、今回のケースでは癒着胎盤という非常に稀な症例(発生率0.01%)に対する処置を行っているときの合併症により患者さんが亡くなられたということ。

内容に関しては、検察側は「癒着胎盤を認識した時点で、胎盤を子宮からはがすのをやめ、子宮摘出手術に移るべきだった」としているが、

 

1.癒着胎盤は胎盤が子宮から剥がれないことが確認されて初めて確診されるものであり、診断後の処置についてもコンセンサスが得られていないこと。

2.患者さんに挙児希望があり子宮温存を望まれていたこと。

 

などを考えると処置自体にミスなどがあったわけではなく、無罪という判決は妥当だと考えられる。当然裁判の焦点となったところは他にも多々あるわけだけれど今回は省かせてもらう方向で…。

 

短絡的な私見ではあるけど、疾患や医療行為の合併症(ミスはないものとして)で責任を問われるようなことになってしまうと、リスクのある処置は何もできなくなってしまうのではないだろうか。確かに近年医療ミスや医師の人格が問われるような事件も多くなってきているが、だからといって誰かが亡くなった時にその責任の所在を明らかにせずにはいられないというのは、ご遺族の方の気持ちとしては理解できるけれど、捜査側や報道の立場の方も含め慎重に判断してもらいたいと思う。特に助からない命が医学の進歩により助かるようになってきた現在、助かるのが当たり前という意識が一般的な認識になってきてしまっているのではないだろうか。当然医療者側としては全力で助けたいと思うからこそリスクも冒すわけであって、そこら辺の理解ももう少し浸透するといいかなと思う。

 

とりあえず行政側も色々と動き始めているようなのでしばらくは注目して見ていこうかと…。

| | コメント (0) | トラックバック (0)